コラム

訪問看護ステーションの立ち上げで失敗しやすいポイントと対策

訪問看護ステーションの立ち上げで失敗しやすいポイントと対策

訪問看護ステーションの立ち上げに向け、入念に準備をしていても、開業後に思わぬ壁にぶつかることがあります。
たとえば、利用者が集まらない・資金が底をつく・スタッフが離職するといった状況は、よく見られるケースです。
こうした状況を事前に知っておくと、先まわりして対策を立てやすくなるでしょう。

そこで今回は、営業・収益管理・組織運営の3つの観点から、立ち上げで失敗しやすいポイントと対策を詳しく解説します。

営業・集客で陥りやすい落とし穴

訪問看護の営業は、一般的な営業活動とは少し異なります。良いケアだけで利用者が増えるわけではなく、紹介もととの関係づくりや効率的な動き方が欠かせません。
この違いを理解した上で、開業時の営業・集客のポイントを抑えましょう。

開業してもすぐには依頼が来るわけではない

訪問看護ステーションを開業後、依頼が来るまでには時間がかかります。
訪問看護の場合、利用者が自分で探して申し込むケースは少ないです。ケアマネジャーや病院から紹介を受けて利用が始まることがほとんどです。
そのため、紹介もととの関係づくりが重要になります。

対策として、開業前からケアマネジャーや病院への挨拶まわりをすると、早期の利用者獲得につながります。

エリアを広げすぎて訪問効率がさがる

依頼を断りたくないあまりエリアを広げすぎると、移動時間が増え、1日に訪問できる件数が減ります。訪問件数が減れば売上も伸びず、看護師の負担だけが増える状況にもなりかねません。

こうしたリスクを避けるためには、エリアを絞っておくのが大切です。目安として、事業所から車で片道30分以内に訪問できる範囲を意識しましょう。

なお、中山間地域や過疎地域など、地理的な事情でやむを得ず移動距離が伸びてしまうエリアもあります。その場合は、収支計画書に無理がないかをしっかり確認しましょう。

営業活動がおろそかになる

現場が忙しくなると、営業は後回しになりやすいです。気づけば、最後にケアマネジャーに挨拶したのがいつか分からなくなってしまう場合もあります。

これを防ぐには、営業を個人任せにせず、組織全体としてのしくみづくりが大切です。たとえば、ケアマネジャーへの挨拶まわりやチラシの送付などを、誰がいつ担当するか月間スケジュールとして決めておきましょう。

管理者だけが営業を担うのではなく、メンバーも一緒に動く体制づくりが、利用者の安定した獲得につながります。

収益管理で陥りやすい落とし穴

訪問看護ステーションの立ち上げで失敗しやすいポイントと対策

訪問看護の経営では、収益を取りこぼしたり、気づかない間にコストが膨らんでいたりするケースもあります。ここでは、加算の見逃しや人件費負担など、注意すべき点をみていきましょう。

加算の算定漏れ

加算の算定漏れは、大きな機会損失につながります。緊急時訪問看護加算や特別管理加算など、算定要件を満たしているにも拘わらず、説明・同意の不足やレセプトのチェック漏れによって算定していないケースは少なくありません。

この対策として、定期的に加算対象者のリストを確認し、算定漏れを防ぐしくみをつくりましょう。

人件費率の高止まり

訪問看護は人件費の割合が大きく、売上が少しさがるだけで一気に経営が苦しくなりやすい事業です。スタッフごとの訪問件数(稼働率)を定期的に把握し、人件費率を意識した経営管理を行いましょう。

特に、2〜3か月先の稼働率を予測しながら管理していくと、急な資金繰り悪化を防ぎやすくなります。

人材紹介会社への過度な依存

人材紹介会社への過度な依存は、利益を圧迫する要因のひとつです。一般的に、紹介手数料は年収の20〜35%程度かかるため、採用コストが膨らみ、人件費率をさらに押し上げてしまいます。

採用を行う際は、自社サイトやSNS、スタッフからの紹介(リファラル採用)を活用して、コストを抑える工夫が必要です。

報酬改定による収支変化の見込み不足

診療報酬・介護報酬は、2〜3年ごとに改定されます。そのたびに収益構造が変わるため、改定の影響を考えていないと、想定していた売上や人員計画が崩れてしまう場合もあります。

とはいえ、改定内容を事前に把握することはできません。そのため、報酬がさがった場合や現状維持の場合など、複数のシナリオを想定しておくとよいでしょう。

組織運営で陥りやすい落とし穴

訪問看護ステーションの立ち上げで失敗しやすいポイントと対策

立ち上げ期はスタッフの人数が少ないため、組織運営について深く考える機会は少ないかもしれません。しかし、スタッフが増えるにつれて、コミュニケーションが複雑になりやすいです。

情報共有が行き届かなくなったり、メンバー間で価値観のズレが生じやすくなったりして、チームの一体感が損なわれるリスクがあります。

経験則として、5〜8名につき1名程度のリーダー候補を早期から育成・配置し、管理者とスタッフの間をつなぐ役割を担わせると、組織が大きくなっても一体感を保ちやすくなります。育成は「いつかやる」では遅く、立ち上げ期から意識的に動くようにしましょう。

まとめ:失敗しやすいポイントを知り、長く続く経営を目指そう

立ち上げの失敗は、準備不足よりも知識不足から来ることが多いです。営業・収益・組織ーーそれぞれの落とし穴を事前に知り、対策を考えておけると、トラブルを未然に防ぎやすくなります。

事業計画はケアプランのように、状況の変化に合わせて更新していくことが大切です。管理者だけでなく組織全体で、気づいたときに修正できるしくみづくりが、長く続く経営の基盤となるでしょう。

監修:小瀬 文彰(看護師・保健師・経営学修士)
株式会社UPDATE代表取締役
小瀬文彰さん
2013年慶應義塾大学看護医療学部卒。
ケアプロ訪問看護ステーション東京にて、新卒訪問看護師としてキャリアをスタート。訪問看護の現場・マネジメント経験の後、薬局・訪問看護を運営するスタートアップ企業にて最高執行責任者として40拠点・年商65億規模の経営に携わり、上場企業へのグループインを実現。
 
現在は株式会社UPDATEの代表として、訪問看護のマネジメントコーチ(経営・組織づくり支援)や組織マネジメント講座を通し、「想いある医療者に、マネジメントの力を」届ける事業を展開中。
そのほか、業界団体の研修会登壇や調査研究支援(シンクタンク事業)も実施中。
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